我々は、「セキュリティトークン(もしくは証券トークン)」が金融市場に大きな変革をもたらすイノベーションであり、ブロックチェーン技術の社会実装における本格的かつ現実的なユースケースであると考えています。
いっぽう、近年、ICOによる詐欺行為が多発したことから、トークンを用いた金融商品に対する信頼度は極めて低くなりました。トークンを用いた資金調達技術は誕生してまもない、新技術です。未成熟な技術のもとに実施されたICOは、詐欺行為を容易に行えてしまう危うさを内包した状態であったと認めざるを得ないでしょう。このような危うさを抱えたままでは、莫大な金額を扱う既存の金融商品のインフラとして、不適格であり、大手金融機関が参画することはできません。ましてや、日本は、大規模な暗号通貨流出事故を招いた当事国ということもあり、非常に慎重な姿勢となっています。
しかし、ICOが未成熟な環境で見切り発車でなされ、不正が横行したこと、イコール、トークンを使った技術に可能性がないとはなりません。現在、強固なセキュリティ環境のもと、コンプライアンス管理の遵守が徹底された伝統的な金融商品も、産まれた当初は、不正と詐欺が多発していました。 それを長い年月をかけて、投資家保護の仕組みが構築され、安全安心な金融商品エコシステムへと環境が整備されていきました。トークンを使った金融商品も同じことです。ICOにおける反省を糧に、システム的にコンプライアンスを強制的に遵守させた「セキュリティトークン」は、むしろ、既存の金融商品よりも、安全安心・省コスト・時間短縮・透明化など、多くの点でメリットをもたらす可能性があります。
今、欧米を中心に「セキュリティトークン」に関する研究がすすみ、セキュリティトークンを用いたエコシステムが構築されつつあります。いっぽう、日本は失敗から成功への道に挑む姿勢に乏しく、多くの経営者が様子見姿勢であるため、このままでは、欧米企業によるネット販売プラットフォームで日本の小売り市場が席巻されたように、金融市場も欧米企業によるプラットフォームを利用する状態になりかねません。
そこで、当協会は欧米に負けない「日本版セキュリティトークンエコシステム」の確立に貢献すべく発足いたしました。システム開発がもたらす変革スピードは増すばかりです。 今、様子見をしている経営者は、どのような状況になったときに手を打ち始めるか、考えを整理しておく必要があるでしょう。もし、金融当局によるガイドラインが確立してからセキュリティトークンエコシステムに参画しようというお考えであれば、当協会の設立趣旨に合致しません。もし、金融当局のガイドラインの草案作りに貢献したい、日本版セキュリティエコシステムの構築から関わりたいという向きは、ぜひ、当協会と一緒に取り組んでいきたいと念願しています。どうぞ、宜しくお願い致します。
一般社団法人 日本セキュリティトークン協会
共同代表理事 並木 智之・共同代表理事 増田 剛